written by FISHER KING

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音響回顧録第2回

私は本番でPAオペレータをすることが決まっていたので、訓練も兼ねて稽古場には機 材を持って毎回行っていました。 まあ、きちんと音響をなさっている方々からしてみれば当然のことであるとお思いで しょうが、私からしてみれば演奏などで本番当日に楽譜をもらって本番に臨むことを時折しているような者なので律儀に稽古場に足繁く通うのは珍しいことでした。
たまたま自宅に音楽制作環境を整える為にそこそこの音響機材は持っていたので、 ノートパソコン・ミキサー・サンプラーは必ず持ち歩いていました。場所によっては環境が整っていない場所もあったので、それに加えてアンプとスピー カも持ち込んでいたので車を持っていない私は毎回稽古がある度に重い機材を持ち運 んでいました。
私は音響の専門的な知識はないので音響プランニングの大原君から基礎をレクチャー してもらうのですが、少なくとも演劇レベルでは役者をよく観察してタイミングと空間を理解することから始まりました。 このことを怠ると本番でとても痛い目にあうことになります。
私自身、作曲も担当しているので脚本は読み込んでいますし、流れは把握しているの ですが、もっと具体的な点として動きを知らないわけですから観察するということは とても大事です。それでも本番の会場に着いてから勝手が違ったので脚本を読み込むことと観察するこ とだけでなく、自分が稽古で見てきたことを舞台で実際に動いてみるという方法を採 りました。 要するに全配役の動きを理解する為に私一人が実際の舞台で動く(演じる?)、イ メージトレーニングをするということです。 覚えの悪い私にとっては実際に動いて体で感じることが一番手っ取り早い手段でこの方法は復習するにはもってこいでした。
後者の空間については会場の空間をいかに自分がイメージ出来るかということです。 正直、稽古の時は舞台面だけの空間のイメージしかしておらず、本番の会場に着いて 調整室に入ってから舞台面だけでなく会場全体を感じなければならない音響の奥深さ と自分の考えの浅はかさを思い知らされる事となりました。
次回は本番を迎えてから感じたことを書いてみたいと思います。


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音響回顧録 第1回

ZaNUKAの第2回公演が終わりある程度の時間が経過しましたが、自分自身も落ち着き を取り戻したということで公演でNaSuという名前で参加した音響の話をしてみたいと 思います。

今回はレコーディングのお話でもしましょう。
本番を観に来たお客様や私の作曲通信を読んでいる方はお分かりだと思いますが、今 回の音楽はレコーディングをしたので生演奏ではありませんでした。 私の意見として、はじめは生演奏を主張していたのですが会場で楽器演奏が不可能ということでレコーディングとなったわけで、結果として音響を含めて全体的なバラン スが整ったのでこれが一番安全で正解だったのだと感じています。
今後ももしかしたらレコーディングの方法が採用されるかもしれません。

私は本番のPA担当として音響に携わったのですが、今回の音響ではレコーディングも あったのでSRの音響も必要としました。 レコーディングのとき、私はフルートの演奏で手が離せないので音響プランニングを 担当した大原薫君と吉祥寺音楽スタジオみけるずの藤巻さんにお願いすることになりました。
演奏した音を録音するだけの話なのですが、録音に至るまでのチェックも大変ですし、演奏した音を製本する作業のマスタリングにも神経を尖らせなければならないのでCDという形で音源が完成したのは本番直前の2日前でした。 ちなみにキャスト稽古のときに音源は必要なので練習用音源も作成して使用していま した。

バンド編成はフルート・キーボード・ギター・ベース・ドラムの5人でマスタリング のときのバランス調整が意外と手間取り、もう少しレコーディングのときに環境を考えればよかったと少し後悔することもありましたが、現在の段階で出来ることは最大限出来たので満足はしています。

このお話は直接関わった大原薫君と藤巻さんにお話を伺うような企画を立ててみたいですね。 次回は稽古場での音響のお仕事のお話をしたいと思います。
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レコーディング
今回の作曲通信では折角ですからレコーディングの風景のお話でもしてみましょう。
録音演奏に協力してくれたバンドの”ネスパ?”によるレコーディングの日程は2日 に分けて吉祥寺の音楽スタジオみけるずで録音されました。 このスタジオはまだ開店してから2ヶ月ほどしか経過していなかった為、とても綺麗 なスタジオで使いやすかったです。
スタジオのプロデューサーである藤巻さんもとてもいい方でかなり手助けをしていただきました。 はっきり言って今回のレコーディングの影にはみけるずのスタッフ様の多大なご協力があり、彼らがいなかったら本番の音がどうなっていたかわかりません。
今回の音楽のバンド編成はフルート、ギター、ベース、キーボード、ドラムの5人で 構成しバランスはとてもいいです。 ですがレコーディングまでの練習がそれほど多くなく演奏家にはかなりの集中力と技術力を必要としました。 またレコーディングの総時間7時間しかないのに、録音しなければならない曲も大変多い上 に1発録音でしたのでレコーディング時にも大変なストレスがかかり、かなり疲労しました。
そんな雰囲気の悪い中でもキャストの方々が見学して頂いた上に差し入れもしてくれ たので休憩の時にはとても助かりました。
レコーディングはパンチ(曲をコマ切りにして修正する)無しの1発通し録音を原則 としたので当たり前ですがミスは絶対に許されません。 誰かがミスをして録音が止まるのですが1・2回くらいだったら笑えるのですが4・ 5回となるとミスの連鎖が始まり、だんだん顔が引きつりぶち切れそうになるのを我慢するのに耐えることに変化します。気分を変えないと音楽に張りが出なくなるのでフィ ジカルな面での調整にも苦労しました。
今回の強行スケジュールの中で録音した音楽が演技・振付・歌・舞台美術に重なり物 語の世界が構築されてきます。 舞台が終わりお客様の拍手が頂いたときにやっと音楽を制作した人たちが笑顔で満足することでしょう。
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レクチャー "charm"



今回は公演の中で一番ミュージカルらしいと思われるナンバー「レクチャー "charm"」のことでもお話しましょう。
この曲が使われるシーンは女性先輩スパイが後輩女性スパイたちに一つの武器として "女"の魅力を厳しく指導するシーンです。 シーンがはっきりしているので、かなり前から曲のイメージは確立していたのです が、出来上がるまでには意外と苦労してしまってかなりの時間を必要としました。 自分は妖艶な音楽とか憎悪の音楽を作るのがあまり得意ではないために時間もかかっ たのも確かだったのですが、このシーンの曲はよく書き直しをしました。
初めは8分6拍子と8分5拍子の変拍子で構成してみたりといろいろと挑戦してみま したが、いざ作り上げてみると女の魅力を伝える妖艶さよりも妙にお洒落になりすぎ てしまったので、もっと単純で分かりやすくスウィングしてグルーブを感じられるよ うな曲に書き直しました。
突出して目立つ曲ではないのですが、私にしては珍しく素直でミュージカルっぽい曲 を作りましたし、今回のミュージカルの中でもマスターの歌に続く楽しい楽曲を作っ たと思います。
この曲は台詞を織り交ぜながらコミカルに進行していくのですが、後半に入ってから のテンポアップの部分はとてもかっこいいのではないでしょうか。 お客様からは評価が頂ける曲だと思います。

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マスターの歌



さて今回は結構作るのに手間取った主人公の一人である「マスターの歌」のお話をしてみたいと思います。
この曲を作るに当たって、曲のきっかけに台詞で「曲がさりげなく入る」という演出の意向があったにもかかわらず、結構派手なスイングジャズで構成しました。しかし完成して聴いてみると意外と「さりげないじゃん!」と自己満足&完結してしまって「これでいいのだ!」と途中で放り出しました。
しかし曲も明るく気持ちのいいスイングになっていて多分憶えやすい曲なのでお客様にはとても印象に残るのではないでしょうか。
マスターのキャラクターには裏表があるのですがそれを感じさせないように、なんかお調子者でおっちょこちょいなで三枚目イメージで曲を作ってみました。
この曲は3回歌うのですが特に2回目の歌で最後にリット(だんだんテンポがゆっくりになること)がかかるところがとてもお洒落でかっこよく決まっていると思います。


12/28

BGM

BGMのお話をしてみたいと思います。
今回はかなりBGMが多くて正直言ってかなり大変でした。相当気を使わないとBGMは印象に残らなかったり、耳障りになったりと扱いが非常に難しいので結構気を使いました。
さて、まず一番初めに作ったBGMのお話をしましょう。
BGM「レクチャーThe Chase」は新人スパイが尾行の研修を受けるシーンでBGMをバックに緊迫したシーンを見せています。この曲はやや長い時間演奏していますが、演奏しているバンドがテクニックを駆使してお客に飽きさせないように工夫して演奏しています。
メロディーラインも尾行と地味でありますが緊張し続けている雰囲気を出させるように努め、それに平行して特に中間部分の楽器ソロの部分はお洒落で華麗さを披露しています。
またBGM「レクチャーThe Chase」の展開系(変奏曲)であるBGM「Shyandy Gaff」はシャンディという女性近接戦闘型スパイが、スクリューという運動神経ゼロの男性頭脳派スパイを敵から救出するというシーンのバックに流れる僅か1分の曲なのですが非常にテクニックを要する曲になってしまって演奏者には多大な苦労をかけることになりました。
この曲はレコーディングでは何回録り直しをした上に、演奏者に「腕が痛い!」「曲が速すぎる!」と何度言われたことか・・・。とてもハードな曲でしたが表現したかった攻撃的で正義の味方が敵を撃破するというイメージはとてもよく表現されているのではないでしょうか。
他にもBGMはありますが特にこの2曲は私のお気に入りの曲でもあります。
今回のミュージカルの曲を書くに当たって今までの自分があまり挑戦してこなかった部分の派手・華麗・攻撃的が集約されていると思います。

12/27
a rose is just a rose



今回お届けする作曲通信は「a rose is just a rose」のお話をしてみたいと思います。
この曲は物語の中で頻繁に使われており、物語のテーマ曲と言っても過言ではありません。この曲は主人公の一人である女性が登場し、その女性の愛を真実の想いを詩にして歌っています。特に演出からの指示はなくストーリーと詩にあわせて作らせて貰いました。
今までバラードを数曲作ってきましたが今回のようなとてもスロウでジャジーなのは初めてだと思います。
私はバラードがとても好きなので今回もとても楽しみ、そして愛を込めて作らせて貰いました。主人公の一人である女性が歌っているとうしろに友人以上恋人未満である微妙な関係の男女のカップルがとても雰囲気よく踊っているのでとても見ものだと思います。
またこの曲はラテンバージョンも作っており、とても大人の雰囲気である曲から一転して、とてもソウルフルで軽快で陽気な曲となっており観ているお客様もとても楽しめる曲だと思います。
何気にこの曲はお気に入りですね。
スタンダードナンバーとしてジャズバーなどで演奏されていてもおかしくない曲だと思います。
そんな曲が生まれると嬉しいですね。

12/26
太陽の帰る地へ


さてこの日刊シリーズもいつまで続くことやら・・・。

さて今回の作曲通信は「SPICY SPIES」で一番力を入れた曲「太陽の帰る地へ」のお話をしたいと思います。
この曲を作るに当たっての演出からの指示は「土臭く砂っぽくやってほしい」でした。この曲は物語に出てくるテロリストのテーマ曲に当たる楽曲でもあるためその雰囲気を出せるように努力しました。
私自身はテロリスト達の今の気持ちや苦い経験をした過去や未来に対する希望や負の気持ちを汲み入れて構成したつもりです。土臭い前半部分の楽曲は村井麗さんにアレンジをお願いし打ち込みというパターンを使用し、ダンスの部分からは混沌とした表現を最大限に生かすためにバンドを使用し表現の二面性を出すようにしました。特にダンスのソロの部分はテロリスト達が味わった苦い経験や混沌を表現したかったので今回の作品で一番こだわっている楽曲となっています。
この曲が作られてバンドで練習しているとき、あまりにも私のイメージが難しいせいか練習の時にはかなりの困難を極めましたし、僕が一番こだわったダンスソロの部分も音楽的にも難しかったらしくレコーディングのときは大変でした。
また8分6拍子と三連符にも苦労して基本の重要性を久しぶりに思い知らせれもしました。
ですがこの曲の演奏にはとても楽しませてもらったのでとてもいい経験が出来たのは確かです。
またこの曲にコーラスを作ってくれた中野を筆頭にキャストの皆様に感謝感謝です。
この曲とダンスをお客様が観てどういう反応をするかがとても楽しみです。

12/25

作曲通信復活

作曲通信の復活です!   作曲通信第一弾「ADACHIGAHARA」編へ
旗揚げ公演が終わってから執筆活動を停止していましたが、楽しみにしていた(?)方々大変お待たせしました。
本来であれば前回の続きとして私の作曲方法などを連載するはずですが、今回は03年1月に控えている次回公演の音楽のお話をしてみたいと思います。
旗揚げ公演ではテクノや民族音楽っぽいものを中心に音楽を展開していましたが、今回は私の我儘でアコースティックでジャズを中心に音楽を展開していきます。理由は旗揚げ公演時の物語の設定は時代劇ということで時代劇にありがちな典型的な音楽にならないように心がけた為に少々奇抜な音楽を作りましたが、今回の公演音楽ではあまり奇抜な音楽ではなくスタンダードで生の音、そして呼吸にこだわりとしたかったからです。その生の音、呼吸にこだわりすぎた為に少々制作進行に支障をきたしましたがこだわった分だけ満足のいく曲が作られていると思います。
上記のように生の音と呼吸にこだわっていながらも、上演の生演奏は小屋の都合で不可能になりましたが、レコーディングスタジオでのバンドによる録音で限りなく生に近い形で観客の皆様にお贈りできます。
レコーディングにはネスパ?とういう大変実力のあるバンドに協力してもらい物語の雰囲気つくりに一役買っています。
また旗揚げ公演に引き続き1曲だけとなりましたが緊迫感のあるシーンをライトストリーム君にアレンジしていただきました。同じく旗揚げ公演でピアノとアレンジをしていたうららさんにも1曲アレンジをしてもらい物語を進行する上でとても大事なシーンを作っていただきました。
同じ曲の展開(変奏曲・使いまわし)も含めて全24曲という大変な量になりましたが観客の皆様には物語と同じく、心に残る曲がひとつでもあればクリエイターとしてとても嬉しい限りです。

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