第一弾 「The Lovestory of ADACHIGAHARA」編


03.06.17

さて今回も先日に引き続き番外編をお送りしたいと思います。前回は音楽を作り始める上での自分の意識を書きました。今回は少し前進してもう少しきちんとしたイメージについて。

音楽の表現方法はひとつしかありませんので記述はしませんが、ミュージカル音楽に関しての表現方法は大きく二つに分かれます。

1.歌やダンスといったナンバー
2.そうではないBGM

これを軸にミュージカル・ナンバーを作るわけですが、音楽を作る際の解釈の手段は大きく四つに分かれると思います。

1.キャラクターに合ったナンバー
2.風景といった雰囲気からのナンバー
3.物語を重視したキーポイントとなるナンバー
4.場と場の間といった技術的手段としてのナンバー(例えばドリフの場転)

はっきり言って上記の考え方はミュージカルだけに限らず、サウンド・トラックという範囲の音楽(映画・テレビ・舞台等々)全般の基本思考と考えていただいても構わないと思います。

今回の「The love story of ADACHIGAHARA」もその基本ベースに忠実です。特に顕著なのが「love song」は1であるキャラクターを重視して作曲し、「逃亡」は2である風景を重視し、「わらべうた」では3であるキーポイントを重視しています。

ここでも注釈しますが、どこに重点を入れているかの問題であって、論理的に作曲をしているわけではないのであまり細かく考えて作曲しているわけではありません。音楽は生き物であるため、いくら頭の中で考えて「こうしたい、あーしたい」と願っても、音楽が一人歩きしてとんでもない方向に進むことが多々あります。また役者も音楽だけではなく、その役として舞台に立ち、その役として人格を表現しているわけですから必ずしも基本思考がリンクするわけではありません。だからと言って、音楽を殺すような表現や詩を殺すような表現は本末転倒ですので注意しなければならないところです。

もちろん上記の基本以外にも努めなければならない点は多くあります。例えば、歌での声の音域やダンスナンバーでの踊りやすい構成などといった点です。そのような点も注意しながら作曲するわけですが難しいのも事実です。

次回は僕の作曲方法でも。



03.06.17

梅雨に入りました。
朝、ベッドから起きテレビの電源を点けて天気予報を観ると「湿度92%」とお天気お姉さんがさも憂鬱そうな感じで淡々と予報を伝えてきます。その淡々とした口調と異常な湿度を肌で感じると何となく”じめー”とした気持ち悪さを1日中、背後霊のように付きまとってくるかと思うとテンションがやや低くなるのは私だけでしょうか。

普段、この通信では私がその都度作っているミュージック・ナンバーが完成されるまでの過程や心境などを書いていますが、今回はやや趣を変えて根本的に音楽を作る技術的過程を書いてみようと思います。

今回、作曲としてお話を頂いてから脚本に目を通しました。脚本に目を通している回数は役者ほどではないかもしれませんが私にしてみれば読み込んでいる方ではないでしょうか。もちろん読み込むだけでは自分の解釈だけになってしまうので、脚本家・演出家と話を交えながら曲の構成とイメージを作り上げていきます。曲の構成やイメージの作り上げに関しては人それぞれですが、私は物語の音楽レベルのイメージ統一を避けるようにしています。誤解を与えてしまうと困るので注釈を入れますが、絶対的なテーマを根底に音楽を作てはいますが、あまり音楽表現がひとつのイメージとして固定してしまうと表現として偏る可能性があるので、あえて技術レベルで避けるといった具合です。ですが、これにもデメリットは存在するわけで、あまり曲の方向性やイメージがバラバラだと統一性がなく物語とリンクしないといった具合になります。

今回のお話は時代劇であり、日本国内のお話なので日本独特の節回しの音楽が解釈的にも妥当であり無難であると思われますが、演出と話し合った結果、そうではない音楽を目指しました。ですので今回の音楽は民俗音楽でもケルトやアフリカン、ダンスも時代劇にらしからぬテクノ、ポップなバラードといった傍目から見たらバラバラな構成になっています。
これをどう表現するかはもう私の能力を超えていますが、物語の一部としてお客様にのような感動を与えることが出来るか。

お客様の反応が楽しみですね。



03.06.10

さて今回は第3場の「歌舞曲」のお話をしたいと思います。

演出からは特に指示はありませんでした。あえて言うのであればケルトでしたね。この曲は本当に好き勝手にやらせてもらいました。それでも構成上、曲の尺を縮めなければならないため楽曲的には未完成の作品です。この「歌舞曲」をまともに演奏したら軽く20分を超える作品になるでしょう。今回、作曲をする上で以前書かせてもらった条件を除いて、やってみたいことはテクノ・ミュージックに挑戦することでした。ですが、自分はテクノを作った事がないので"LightStream"君にお願いしてアレンジをお願いしました。
今回の楽曲が出来るまでの過程は僕が元となる楽曲を作ります。その後、脚本と照らし合わせて構成を練り、基本的なベースを作ってから"LightStream"君と打ち合わせをして肉付けをしていきました。肉付けをしているときは基本的に僕はえらそうに煙草を吸いながら"LightStream"君に指示を出しながら編曲をするといった感じです。編曲が終わってからは"LightStream"君にマスタリングをお願いして最終的な微調整をしてもらっています。

曲の構成は歌の部分がアンビエントでダンスの部分がトランスといった具合になりました。基本的に僕の好きな音楽のジャンルはドラム&ベース、プログレ、アンビエント、ジャズ全般であるためこの曲は基本的に僕の好みになっているのではないでしょうか。

今回の楽曲は、はっきり言って作曲の段階で歌の部分は物語を考慮して作りましたが、編曲に入ってからほぼ無視しています。作曲段階ではケルトのベタなフレーズを使っていますしコードもメロディーとぶつかるように構成して結構気を使っていますね。編曲に入ってからは溜まったストレスを発散するかのような構成ですね。

これの評価に関しては本番が終わってからアンケートを読みたいと思っています。まあ、好き嫌いがはっきり分かれそうな気がします。



03.06.09

今日は「わらべうた」のお話でも。

この曲が実際上がったのは「lovesong」よりかなり後になってたでしょうか。
いつ頃に上がったかは忘れてしまいました。

プロット段階で民謡を入れてほしいというお話は伺っており、初期にいくつか提示したのですが演出からは「もっと俗っぽい童謡が欲しい。家の中で鼻歌を交えながら家事をしているような曲が欲しい。」と言われ、ちょっと悩みました。そのため作曲していた当時、私自身は暇だったので結構、日本の民謡とヨーロッパ(特にケルト)を聴きまくり、頭がウニみたいになっていました。タイトルが「わらべうた」というのは途中からですが決まっていたので、私自身は「童歌だから分かりやすくて、覚えやすくしないとダメだよなあ。」とその時点でも悩んでしまいました。最終的には自分のカラーで勝手にやってしまえと半ば開き直って曲を創りました。僕のイメージはケルトっぽくではあるが、所詮僕は日本人なので「それっぽければいい」という考えで進めました。演奏家はともかく、多くの作曲家はそれっぽければいいと言う考えを持っている人が多いです。それは悪い意味ではなく、それはまったく外野の人がその現地の芸能や文化、民俗を一夜漬けみたいな状況で作曲できるはずはないし、伝統音楽をするわけではないので
あれば、自分自身の色を出すために自分の漠然としたイメージを十分に出した方が結果、そのアーティストの色が出て良くなるからです。例えば、映画で日本人なり日本文化の内容が出てきたとしても、私達日本人がそれを観たとき「ちょっとなあ・・・」というのが多々あるはずです。
でもそれが映画の評価を極端に低くするわけではないですし、リアリティーをその時点で望んでいないはずですから、それが監督の味になるわけです。今回の僕の童歌もそんなもんだと思っていただければ助かります。

最後に曲を提示したのが採用になったのですが、8小節の後半部分が物足りないということになり、うららさんとお話して後半4小節は彼女のアイデアで曲が変わりました。

結果として童歌のように聴こえるかはともかく、頑張って創ったつもりです。また、童歌のくせに結構、物語りの進行上で意外と重要な役割をしていると思うと大変な曲になっているなあ、と感じます。




03.05.31

まず1回目の今回は「lovesong」です。

この曲は演出から今回のお話を頂き、脚本のプロットを聞いて書いた曲です。私は今回のお話を受ける際「ラブストーリーであること」を条件にさせてもらいました。

条件やタイトルがそうであるように、自分がラブソングを書きたいという気持ちがよく出ている楽曲だと思います。だからと言って何も考えずに書いたわけではありません。プロットの段階でこういう曲が欲しいという演出の希望もあり、キャラクターを考慮して創りました。
演出からは「思いが通じていて愛し合っているが、どこか切なくまだ果たされていない・・・」というお話でした。自分自身、この曲を作り終えてイメージどおりには出来たと感じています。ちなみに私はバラードは得意なので上手く出来た楽曲だと思います。

途中でフルートのソロがあります。
歌にしようか迷ったのですが自分も歌いたいという理由でフルートソロにしました。

実を言うとはじめは「ラブソング」がテーマだと思っていましたが、本当は第3場の「歌舞曲」がテーマソング。

次回は「わらべ歌」です。




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